ルイス・サッカー/穴
Louis Sachar/HOLES(1998)
(講談社文庫 2006年、親本は1999年)
<ストーリー>
無実の罪で少年矯正施設グリーン・レイク・キャンプに放り込まれたスタンリー・イェルナッツ。
そこでは誰もが一日ひとつ、直径と深さが1.5mの穴を掘らされる。
「グリーン・レイク」とは名ばかり、干からびてカチンコチンの地面に穴を掘るのは重労働。
人格形成のためというけれど、本当にそうなのかな・・・?
面白いとは聞いてました。
傑作だという噂でした。
しかし、これほどだとは!
昔の刑罰で、地面に大きな穴を掘らせ、翌日それを埋めさせる、というのを読んだことがあります。
それを繰り返していると、囚人はやがて生きる気力をなくして本当に死んでしまうのだとか。
恐ろしい話です。
スタンリーたちは、埋め戻す必要はないけれど、毎日毎日穴を掘らされます。
・・・いったい何のために?
スタンリーの先祖が遠い昔に破った約束。
かつて西部で恐れられた女無法者ケイト・バーロウ。
昔々グリーン・レイクで繰り広げられた悲しい恋の物話。
周到に張り巡らされた伏線は絡み合いもつれ合い、過去と現在は交錯し、
すべてのピースがあるべき場所に収まって、最後に見えてくる物語とは。。。
要するに「親の因果が子に報い」の因縁話なのですが、
完璧なハッピーエンドであるのが、ホントに良いですねえ。
ただ、文庫の帯には「生きる勇気が湧いてくる」とありますが、
それはちょっと違うのではないかと。
全ての要素が結末へ向けて綺麗に収斂していく様は、まるでよくできた数学の問題のよう。
「一音たりとも無駄な音がない」モーツァルトの音楽のような、
すきまにトランプ一枚はさめないインカの遺跡の石垣のような、
完璧かつ緻密なストーリーテリングの妙が楽しめる小説です。
(07.1.1.)