渡辺優/並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし
(集英社 2020)




Amazon : 並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし


注射が笑いのツボに入りすぎる「注射」。車の運転が驚くほどできない「運転」。コールセンター勤務でクレーマーに癒される「コルセン」。
想像の斜め上をいく発想と笑いが炸裂する全25篇。共感かドン引きか―あなたはどっち。


ふだん難解な本ばかり読んでいるので(←大嘘)、ときどき軽いエッセイを読みたくなります。
この本、最近読んで大笑いさせてもらいました。

 渡辺優/並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし

長いタイトルですが、「わたしたち」と「たのしい」が平仮名なのに「暮らし」が漢字なのがなぜか気になります。

初読みの作家さんです。 
小説もいくつか書いているようです。
というか小説家のほうが本業らしいのですが、まずエッセイを読んでしまいました。
焼肉屋に行っていきなりピビンバと冷麺を注文してしまったようなばつの悪さを一瞬感じましたが一瞬だけです。
ジャンル的に細分化するならば自虐妄想系エッセイというのでしょうか。

 「ひとは自分の五感をもってしか世界を認識できず、その五感が各々絶妙に異なっているわけですから、
 これはもうみな違う世界に生きているのと同じことかと思います。
 皆がそれぞれの宇宙の中で生きていて、他人の宇宙は並行宇宙です。」


という哲学的な前書きで始まるので、なにかSF的な考察が展開されるのかと思ったら、全編にわたって高純度に濃縮されたお笑いがめるくめくのでした。

第1章「運転」は、

 「運転免許を持っているのですが、私のような人間に免許を与えてはいけなかったと思います」(4ページ)

という告白に始まり、教習でドジったこと怖かったことを面白おかしく語り、無事に合格、

 「免許証を手にしたときに最初に思ったのは、これでもう運転しなくて済む、ということでした。すごく嬉しかったです」(7ページ)

というオチに着地します。
完璧や、完璧なネタやないですかこれ(←漫才と違う)。

そんな感じで安定して笑える話がてんこ盛り、たいへん楽しうございました。
挿絵(内山ユニコ)もシュールで可愛いです。

こちらで試し読みできます。よろしければどうぞ。
    ↓
 渡辺優/並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし・試し読み


ちなみに著者は、ドビュッシーの「ゴリウォーグのケークウォーク」が滅茶苦茶怖いとのこと。
「なんというかピエロの笑顔的な、ぐいぐい迫ってくる、逃れられないクレイジーなハピネスを感じ、恐怖を覚え」るんだそうです。(107ページ)
なるほどいわれてみればスティーブン・キング的怖さを感じるような。
この繊細でゆがんだ感性、共感してしまいました。
私もこれから「ゴリウォーグのケークウォーク」が聞こえたら耳をふさいで走って逃げることにします(←著者よりヤバい人になってしまう)。

 

今度この方の小説も読んでみることにしよう。

(2021.02.05.)

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