ルー・ハリソン/ア・ポートレイト(1997録音)



Amazon : Lou Harriosn A Portrait

<収録曲>
エレジー〜カルヴィン・ソモンズを偲んで
バレエ音楽「ソルスティス」
コンチェルト・イン・スレンドロ
交響曲第4番(ラスト・シンフォニー)

たとえばこの曲を聴いて、20世紀アメリカの作曲家の作品だと思う人がどれだけいるでしょうか。

 コンチェルト・イン・スレンドロ 第1楽章
 

東洋趣味全開の楽しいヴァイオリン協奏曲。
下町の中華料理屋のBGMにどうですか。
「スレンドロ」というのは、ガムラン音楽の音階の一つだそうです。

そう、ルー・ハリソン(1917〜2003)は、ガムランなどの東洋音楽に興味を示し続けた作曲家。
オレゴン州ポートランドで生まれ、まもなくサンフランシスコに転居。
幼い頃の彼の家は母親の趣味で、ペルシャ絨毯の上に中国製のチーク材の家具が置かれ、日本の提灯や七宝焼きの陶器が飾られていたそうです。
本人は後年、「まるで魔法のような場所だった」と回想しています。

幼いころからピアノと作曲、さらにダンスを学び、サンフランシスコ州立大学で作曲家のヘンリー・カウエルに師事、
カウエルは「世界の人々の音楽」という授業を行っており、ハリソンはそこでさまざまな民族音楽に触れます。

卒業後はニューヨークに移り住み、友人の作曲家ヴァージル・トムスンの推薦で「ヘラルド・トリビューン」誌にコンサート評を書くようになります。
作曲家としては、初期は12音技法や不協和音を多用していたけれど徐々に抒情的な作風に変化、
1950年のバレエ音楽「ソルスティス」は、東洋的な旋法を用いた神秘的な音楽で、思わずお香を焚いて瞑想したくなります。
エスニックなカフェのBGMにいかがっすか。

 ソルスティス 第1曲「太陽の庭」
 

いかにも西洋人が考えるところの「東洋風」って感じですが、耳に快く、スーッと聴けてしまいます。
音の身振りがハッキリしているので、音楽の流れ、いわば筋立てが明快で迷いがないのですね。
「いったい何がやりたいんですか?」と言いたくなるある種のゲンダイオンガクよりもずっと潔いと思うのです。

 ソルスティス 終曲「白昼の陽光」
 

社会的成功にもかかわらず、ハリソンは大都会ニューヨークでの生活にはなじめませんでした。
1951年にはノース・カロライナ州の大学の教員となり、1953年にはカリフォルニア州の小さな村・アプトスに移り住みました。
田舎者の私、わけもなく親近感を覚えます。

交響曲第4番「ラスト・シンフォニー」(1990)は、40分を超える大作。
アメリカ先住民・東洋・中東などの民族音楽をよくかき混ぜて、煮込んで綺麗に盛り付けて、ちょっと現代音楽風のトッピングを加えたかんじ。
神秘的でありながら人懐こい冒頭から引き込まれます。 メロディがどこか東洋的です。

 ラスト・シンフォニー 第1楽章
 

第3楽章「ラルゴ」の、大自然を音で描いたかのような、雄大でありながら内省的な響き!
自然満喫系ドキュメンタリーのBGMにいかがっすか。

 第3楽章 ラルゴ
 


第4楽章にはナヴォホ族の民話の語りと歌(by アル・ジャロウ!)が加わりますが、
これは英語を解さない私には残念ながらピンときませんでした。


2003年、オハイオ大学でハリソン作品を特集する音楽祭が開催されることになりました。
ルー・ハリソンは会場に向かう途中で立ち寄った、インディアナ州ラファイエットのレストラン・デニーズで心臓発作で倒れ、亡くなりました。
享年85歳でした。


 エレジー〜カルヴィン・シモンズを偲んで (1982年に海難事故で亡くなったオークランド交響楽団の指揮者カルヴィン・シモンズに捧げた曲)
 

(2026.05.30.)

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