ヤマシタトモコ/花井沢町公民館便り
(講談社 2015〜16 全3巻)



Amazon : 花井沢町公民館便り(1) (アフタヌーンコミックス)

西暦2055年、シェルターや刑務所に使う予定だった「生命ある有機体を通さない見えない膜」の実験事故により、花井沢町は外界から隔絶されてしまう。
見えない膜越しにモノはやり取りでき、会話も交わせ、電気も水道も通じるが、生きているものは外に出られず、中にも入れない。
それでも花井沢町の人々は、それぞれの日常を生きていくしかない。


ヤマシタトモコ/花井沢町公民館便り


設定はSFですが、科学技術的なことは出てきません。
特異な状況下での人間ドラマです。
閉ざされた街の日常が連作短編形式で淡々と描かれ、作中ではほぼ200年が経過します。
時系列は意図的にシャッフルされていて、頭の中でこれはいつの話なのかを考えながら読む必要があります。


 試し読み


花井沢町は乗り換えなしで都心まで数十分の、一戸建てが多いベッドタウン。
いきなり外部から遮断され、最初はおそらく数百人いたと思われる住人は徐々に減ってゆきます。
町には病院はないらしく病気になっても入院はできないし、壁の中でも子供は生まれますが危険は大きいようです。
住民は主に政府から支給される物資や慰謝料で生活し、ネットビジネスをやったりする人もいます。
閉ざされる前を知る「前世代」はだんだん減ってゆき、人は閉じた街の中で生まれ、成長し、老いて死んでゆきます。

最も重要な登場人物は花井沢町最後の住民となる少女・希(のぞみ)ですが、ほかにも多くの人々が登場します。
そして結末は絶望なのか希望なのか・・・・・・ネット上でもいくつかの解釈が見られます。

ところで考えてみると私は職場まで10km足らずのところに住んでいます。
遊び歩くこともほとんどなく、家と職場の往復なので、ふだんの行動範囲はほぼ半径5km以内。
これって花井沢町の人々と比べてどうなんだろう・・・(まあ行きたければどこにでも行けますけど)。
でも仕事に疲れたりすると、ふとこの作品を思い浮かべ「花井沢町民は働かなくていいんだ・・・」などと考えてしまい、「いかんいかん」と我に返ります、危ない。

大傑作だと思うのですが、著者によると「あまり売れなかった」そうです・・・。 → インタビュー記事へのリンク


(2020.11.01.)


(閉ざされて間もないころの花井沢町公民館)


(閉ざされて150年くらい?たった公民館)


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