矢崎良一・監修/白球と宿命
(日刊スポーツ・ノンフィクション 2008年)
Amazon.co.jp : 白球と宿命 甲子園から生まれた6つの物語
じつは、うちの長女(中1)は大の野球ファンです。
部活は吹奏楽部で、クラリネット吹いてるんですが、なぜか野球ファン。
プロ野球ではソフトバンク・ホークスが好きで、「月刊ホークス」という雑誌まで読んでます。
去年の夏休みは一家で福岡まで観戦に付き合いました(ソフトバンクはダルビッシュにコテンパンにやられました)。
高校野球も大好きで、甲子園スコアボード型目覚まし時計なんて代物を愛用しています。
昨年はニョウボと一緒に泊りがけで春のセンバツを観にいってます。
今年も春休みに行く予定。
私は仕事があるので留守番です。 お土産忘れるなよ。
でも夏の甲子園は、暑いし日焼けするから行かないそうです。
私はといえば・・・、野球にはあまり興味がありません。
娘に付き合わされて、仕方なくTVやインターネットでナイター中継を見たりする程度です(←普通は逆だろ)。
この本も、娘が買ったものですが・・・、読んでみるとなかなか面白かったです。
高校野球をめぐる6つのエピソードが収録されています。
公立の進学校なのに、昨年の夏大会をあれよあれよという間に勝ち上がり、
ついに甲子園を制覇してしまった佐賀北高校の話とか、
大阪桐蔭高校から今年日本ハムに入った中田翔選手のドキュメント、
昭和52年の夏の甲子園を沸かせた東邦のピッチャー坂本佳一(通称「バンビ」)のその後(大企業でやり手の営業マンに)
などがおさめられています。
一番読みごたえがあったのは、ハンカチ王子・斎藤佑樹を擁して2006年夏の甲子園を制した、早稲田実業ナインのその後を綴った章。
早実から早大野球部に進んだ優勝メンバーのうち、入学から数ヶ月ですでに3人が退部、という衝撃の(?)事実から書き起こし、
退部した選手たちのインタビューで構成されます。
斎藤佑樹投手は登場しません。
退部した選手たちは、語り合います。
「あの夏を越える夏は、もうないよなあ」
「ねえよ」
「人生のピーク、18だよ」
「はえー」
「社会人になって、あれ以上、興奮することって、ある?」
「ないね」
「あの残像を背負っていくんだ。 あの、タイムリーを打ったときのこととか」 (117ページ)
うーむ、若くして頂点を極めるのも、苦しいものなのですね。
「やり遂げたというか、達成感みたいのが大き過ぎた」(109ページ)
まだ若いし、甲子園優勝メンバーの肩書きはあるし、早稲田大学という学歴もあるし、
前途洋々じゃないですか・・・と、他人は言いたくなるのですが、彼らには彼らなりの困難があるのでしょう。
章によって執筆者は違いますが、高校野球と選手たちへの愛情あふれるまなざしが一貫していて、
気持ちよく読み終えることができました。
(08.3.20.)