墓マイラー・カジポンの世界音楽家巡礼記
(音楽之友社 2020年)



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「墓マイラー」とは、有名人・偉人の墓参りを趣味またはライフワークとする人。
日本を代表する「墓マイラー」カジポン氏は、さまざまな芸術家のお墓を精力的に参っているそうです。

本書「墓マイラー・カジポンの世界音楽家巡礼記」は、
著者がまだ十代の1980年代から、結婚し父親になった現在までにお参りした、古今東西の音楽家のお墓をまとめたもの。

取り上げられる音楽家はざっと120人。

ベートーヴェンやドヴォルザークの音楽は知っていても、彼らがどんな墓に眠っているのかさっぱり知らなかった私(というか考えたこともなかった)。
ページをめくるたびに「へえ〜」の連続でありました。
本書の取材に要した時間と労力と費用、大変なものだと思います。
著者の「偉人愛」の凄さがひしひしと感じられて空恐ろしいくらい。
しかも全ページカラーです、全てのお墓のカラー写真を掲載してます、こんな本世界のどこにもないんじゃないかな。
これで「2000円+税」は安い、安すぎるくらいです。

文章も通り一遍ではなく、ちょっとした「墓参りルポ」。
偉大な音楽家でもお墓は意外と知られておらず、観光地化などしてないので、見つけるまでが一苦労。
エリック・サティの墓を清掃人に尋ねたら清掃車に乗せて墓地まで送ってくれた話(86ページ)。
カルロス・クライバーやグレン・グールドのお墓を見つけることができたのは奇跡のような出会いのおかげだったりします(122&148ページ)。
チャイコフスキーとドフトエフスキーの墓参りを思い立ったもののソ連崩壊前だったので入国には大変な苦労。
でも同じ墓地にムソグルスキーもグリンカもプティバも埋葬されていてお得(?)だったことなど、(130ページ)、大変面白く読みました。

「日本編」もあり、山田耕作、武満徹、團伊玖磨、伊福部昭、滝廉太郎などのお墓が紹介されてます。
各項目には音楽家たちのエピソードも書かれていますが、面白い切り口で愛情とリスペクトを感じます。

度肝を抜かれたのが表紙裏と本編最後に掲載されている広告。
故人の遺骨で作ったアクセサリー「ソウル・ジュエリー」です!
遺骨ペンダント、遺骨ブローチ、遺骨ブレスレット・・・・・・専門の職人による手作業で丁寧に制作、どのようなご注文にも応じます!


・・・ともかく、最近読んだ音楽関連本では出色の一冊でした。
新型コロナで思うように旅行もできない今日この頃、バーチャル旅行気分も味わえます。

(2021.01.08.)




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