モーツァルト/セレナード第7番ニ長調K.250「ハフナー」
トン・コープマン指揮 アムステルダム・バロック管弦楽団




Amazon.co.jp : モーツァルト:ハフナー・セレナード

一番明るいモーツァルト


このところ仕事が忙しモードで、ちょっぴりストレスがたまっております。
私はストレスがたまると、なぜか空咳がでます。 コホコホ。
こういうときは、理屈抜きで明るい音楽を聴きたいもの。

ところでモーツァルトの管弦楽曲の中で、一番華やかで明るい曲といえば・・・?
私は、セレナード第7番K.250「ハフナー」だと思います。

作曲の経緯がまず御目出度い
ザルツブルグ市長・ハフナー氏の息子ジークムントモーツァルトは同い年で親友同士。
1776年、ジークムントの姉マリー・エリザベートの結婚が決まります。
その結婚式の前夜祭に演奏するための婚礼音楽として作られたのが、「ハフナー・セレナード」
全8楽章、演奏時間1時間という大作で、モーツァルトの管弦楽曲としては最長と思われます。
でも、賑やかで華やかで、全然退屈しません。
きわめて完成度の高い傑作であり、後期の交響曲と比べても引けを取りませんし、
第2〜4楽章ではヴァイオリン・ソロがフィーチャーされ、ヴァイオリン協奏曲みたいになっているのも素敵です。

1776年7月21日、ハフナー家の庭園で初演。
夏の夕刻、地元の名士や貴族、貴婦人たちがワイン片手に談笑する中を、行進曲K.249を演奏しながら、
モーツアルトと楽員たちは庭のあずまやに集合。
整列したところでおもむろにセレナードの演奏開始。
20歳のモーツァルト、ハツラツと指揮をし、自らヴァイオリン・ソロも弾きこなします。
いや〜、凄かっただろうな〜、華やかだっただろうな〜、観たかったなあ〜。

第1楽章は、アレグロ・モルトの主部の前に、アレグロ・マエストーソの序奏がつきます。
序奏も主部もアレグロなので境目がわかりにくいですが、賑やかで華やかで威風堂々な第一楽章、細かいこと気にせず聴きましょう。
華麗で堂々たる横綱級のオープニングから、いきなり引き込まれます。 なお主部は1:01からです。

 

第2楽章アンダンテ。ヴァイオリン・ソロが伸びやかで優しい歌を歌います。

 

第3楽章は、のちの交響曲第40番の第3楽章を予見するような、素晴らしいト短調のメヌエット。
中間部では一転、ヴァイオリン・ソロが明るく華やかな活躍を聴かせます。

 

第4楽章は、独立して演奏されることもあるロンド。ヴァイオリン・ソロ、大活躍です。 
はっきり言って、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲のどの楽章より良いです(←極私的意見)。
輝く太陽のように快活、妖精の戯れのように典雅、この楽章を聴かずしてモーツァルトを語るなかれです(←何をえらそうに)。

 

第5楽章、メヌエット・ガランテ(優雅なメヌエット)と題された楽章。
私は、交響曲第41番「ジュピター」の第3楽章を連想するのですが・・・。
中間部は短調に転じて、一抹のほの暗さ。

 

第6楽章、自由な形式によるアンダンテ。 あえて言えば変奏曲とロンドの融合なんだそうで。
この楽章、なんとも言えず好きです。 穏やかで優雅で品があって、幸せな気分になります。

 

第7楽章は、気合いの入ったメヌエット。 交響曲第39番の第3楽章に通じるものがないですか?(と無理やりもっていく)

 

第8楽章、フィナーレです。 アダージョの序奏がついてます。ハイドンの交響曲でも始まるみたいな雰囲気。
主部はリズミックなソナタ形式。 笑いさざめき、高笑い、明るい微笑、いろいろな笑いが交錯するような、底抜けに明るい音楽です。

 

演奏が終わると、モーツァルトと楽員たちは再び行進曲K.249を演奏しつつ、拍手喝采の中をニコニコと嬉しそうに退場してゆくのでありました。

トン・コープマンのCDは、ちゃんと行進曲もついていて、演奏も素晴らしく、おまけにセレナード第6番「セレナータ・ノットルナ」まで収録されて1050円
もってけドロボーな、一家に一枚な、買って損はないアイテムです。

さて、ジークムント・ハフナーは、6年後の1782年には、貴族に列せられます。
モーツァルトは、このときもセレナードを作曲して祝いました。
このセレナードから4つの楽章を選んで手を加えたのが、交響曲第35番「ハフナー」
姉弟そろって、モーツァルトの傑作を贈られるとは・・・うらやましいですな。

もっともこの姉弟、残念ながら短命でした。
姉のマリー・エリザベートは1781年にわずか28歳で、弟のジークムントは1787年に31歳で亡くなっています。
モーツァルトの名曲にその名が刻まれていることをもって瞑すべきでしょうか。

(07.2.25.)

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