沼野雄司/現代音楽史〜闘争しつづける芸術のゆくえ
(中公新書 2021)



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それなりに永いことクラシック音楽を聴いてきたので、「音楽史」についても多少はわかっているつもりです。

 バロック時代 → 古典派 → 前期ロマン派 → 後期ロマン派・国民楽派・印象派 → あとはいろいろ・・・

って感じですよね。

20世紀以降の音楽は「あとはいろいろ」に含まれ、体系立てて考えたことはありませんでした。
でも考えてみれば20世紀にも「音楽史」はあるんですね・・・。

 沼野雄司/現代音楽史〜闘争しつづける芸術のゆくえ

本書は、20世紀から今にいたる「現代音楽」をひとつの「流れ」としてすっきり解説してくれるスグレ本。
新書で手軽なのがうれしいです。
読み物としても面白く、登場する作曲家たちのキャラが立っていて、それぞれ得意技を繰り出して歴史を彩ってゆきます。

「必殺・十二音技法」の使い手シェーンベルク「新古典主義」ストラヴィンスキー(のちに「十二音技法」も駆使)、
ジャズを自在にあやつるガーシュイン、キャバレー音楽を芸術に高めたクルト・ヴァイル
「社会主義リアリズム」に押しつぶされそうになりながらもしたたかに立ち回るシュスタコーヴィチ
トーン・クラスター使いペンデレツキプリペアド・ピアノを考案し、易経で偶然と不確実性の音楽を生み出したジョン・ケージ

 ・・・なんの忍法だよと思います。
 マンガ「伊賀の影丸」を思い出しました(←古い)

さらに時代は進んで、
フランスのピエール・シェフールが列車や波や車の音を録音して加工して作品に仕上げる「ミュージック・コンクレート」を編み出し、
いっぽうドイツでは「電子音楽スタジオ」が設立され(1951年)、シュトックハウゼン、リゲティなどが「電子音楽」を作り出します。
リュック・フェラーリは自然音をつなぎ合わせた「音の風景」のようなミュージック・コンクレートから出発し、それを電子音楽と融合させた美しく幻想的な作品を制作。

 リュック・フェラーリ/Presque Rien(ほとんど何もない)第1番(1970)
 (NHKラジオの「音の風景」かと思う・・・)

 リュック・フェラーリ/春の風景のための小交響曲(1977)
 (ブライアン・イーノのアンビエント・ミュージックみたい)

そしてアメリカではテリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスなどがミニマル・ミュージックを創始、ポピュラー音楽にも影響を与えてゆきます。

じつはミュージック・コンクレートや電子音楽も、ポピュラー・ミュージックに大きな影響を与えます。
ザ・ビートルズ「サージェント・ペパーズ」にはドアをノックする音や鶏の鳴き声が入ってますが、あれは「ミュージック・コンクレート」なんですね。
ちなみにこのアルバムのジャケットにはシュトックハウゼンも並んでいます。
あと、「ホワイト・アルバム」収録の「レボリューション No.9」は当時世界で一番聴かれたミュージック・コンクレート作品といっても過言ではないです。

 レボリューション No.9
 (ちなみに私は最後まで聴き通せたことはありません)

著者は1968年のフランス五月革命(とそれに続く世界の学生運動)が、現代音楽にも多大な影響を与えたと述べ、
1968年という年にまるまる1章をさいています。
なるほどこういう見かたがあるんですね、目から鱗です。
たしかに政治と音楽は切っても切れないものかも知れません。
そういえば1969年にはあのウッドストックも開かれますし。

さらに1980年代、2000年代に入ってくると、名前も聴いたことのない作曲家がいろいろ変わったことをやっていて、「へえ〜」という感じです(←投げやりやなあ)。
最後は「音楽批評のありかた」についても一言述べて終わりますが、たいへん面白うございました。
同時に、つねに新しいものを作り出していかなくてはならない現代の作曲家は大変だな・・・と思ったことでありました。

 現代音楽の世界では、しばしば「誰が最初にそれを行ったか」が問われる。
 本来は「誰が良い曲を作ったか」こそが問題になるはずなのだが 
(本書129ページ)

(2021.10.30.)

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