ルキノ・ヴィスコンティ/山猫
Luchino Visconti/IL GATTOPARDO
(1963)



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1860年、多くの小国に分裂していたイタリアに統一の機運が。
シチリア島の大貴族・サリーナ家にも統一戦争の波は否応なく訪れる。
かわりゆく時代を見つめながら、過去の遺物として消えゆくことを選ぶサリーナ公爵(バート・ランカスター)。
義勇軍に身を投じ、新時代にもしたたかに適応してゆく公爵の甥タンクレディ(アラン・ドロン)。
その婚約者で、新興ブルジョワジー階級の快活な娘アンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)。
絢爛豪華な映像で新世代と旧世代の交代を哀切こめて描いた叙事詩的名作。


「眠りだよ。長い眠りを求めているのだ。そして、ゆり起こす者を憎む。
我らの願望は――忘却だ。忘れ去られたいのだ」



「山猫」舞踏会の場面より


ルキノ・ヴィスコンティ(1906〜1976)の映画といえば、その昔「家族の肖像」(1974)を観て爆睡した美しい想い出があります。
名作の誉れ高い「ベニスに死す」(1971)も、初老の音楽家が美少年に魅了され、
ひとり悶々としたあげくに死んでしまうという、熟女好きな私には理解不能なストーリーで、ピンときませんでした。

しかし、この「山猫」は素晴らしかったですっ!

なんといっても画面の豪華さ、美しさ。
構図は完璧、色彩は華やか、どのシーンも写実派の名画が動いているよう。
家のTVでDVDを観ながら、これを映画館の大スクリーンで観たらどれほど・・・と想像しました。

若きアラン・ドロンの剃刀のような鋭い美貌。
最初は「理想に燃える好青年」だったのが、徐々に野心的でしたたかな男に変貌してゆく名演技。
そしてクラウディア・カルディナーレのワイルドでエキゾティックな魅力(目ヂカラ半端ない!)。
ただの美人さんじゃない、地に足が付いたたくましさ。



しかしなんといってもバート・ランカスター演じるサリーナ公爵の品格と貫禄(アメリカ人とは思えません)。
新しい時代に乗り出してゆく若者を祝福し援助しながらも、自分は新政府議員への就任要請を固辞し、時代のはざまで静かに消えてゆくことを選択します。
「山猫」というタイトルは、サリーナ家の紋章に由来しているのですが、
バート・ランカスター演じる公爵自身の姿が、誇り高き山猫に見えてきます。

いや、実際ちょっと猫っぽいですよ、この人。
佐野洋子「百万回生きたねこ」は、「山猫」バート・ランカスターをモデルにしたんじゃないでしょうか(←んなアホな)。

ヴィスコンティは、自身イタリア貴族だったこともあって、貴族を描くにあたっては本物志向を徹底。
終盤の1時間に及ぶ舞踏会のシーンでは、本物のシチリア貴族をエキストラとして多数動員したそうです。
さらにセットは極力使わず本物の邸宅や教会を使用、その際も人工的なライトではなく、自然光と蝋燭の光で撮影。
大量の蝋燭のせいで舞踏会シーンの撮影現場は蒸し風呂のようだったとか。
衣装や小道具も、可能な限り当時の製法で復元したそうです。

また、ニーノ・ロータの重厚かつ優美な音楽も、必要以上に出しゃばらず、画面をしっかり引き締めています。


3時間をこえる映画ですが、「キレーだなー」と、ポケーと眺めていると、いつの間にか終わっていました。
作品の奥深い魅力とか、公爵の本当の思いとか、当時のイタリアの時代背景とか、さっぱり理解できていない自信満々ですが、それでも非常に楽しめました。

折にふれて観返したい映画がまた増えてしまった・・・どうしよう。

(2016.07.23.)




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