北尾トロ/ぼくはオンライン古本屋のおやじさん
(ちくま文庫 2005年  親本は2000年)


Amazon.co.jp : ぼくはオンライン古本屋のおやじさん


「ブックオフやブックマーケットの前を素通りできない病」に冒されて長い私ですが、
最近はネット古書店もウロウロしてます。
家にいながら絶版本が検索・購入できるという便利さ、一度味わうと手放せません。

著者・北尾トロ氏は、フリーライターですが、
いっぱいになってしまった自分の本棚を眺めて「オンラインで売ったらどうだろう」と思いつき、
ネット古書店「杉並北尾堂」を開店 (ライターの仕事は続けながらの副業です)
本書は1999年10月の開業から、2000年7月までの10ヶ月間を、細かい収支つきで報告した日記風エッセイです。

手持ちの本が売れてゆけば、仕入れもしなければなりませんが、
古本を個人から買い取るためには、古物商の認可を受ける必要があり、
所轄警察署への申請が必要なのだとか (なぜ警察なんだ?)
扱う本は、何でもかんでもというわけではなく、
ヘンなノンフィクション(企画本、エロ、犯罪、コラムやエッセイ集など)
同性愛・ジェンダー関連書、ギャンブル本、植草甚一本 etc. と、相当マニアック。

毎月の売り上げは12万から18万円、利益は5.5万から12万円、
副業とはいえ、サイトの手入れや更新、商品の仕入れ、整理、値付け、梱包と発送(これが特に面倒)など、いろいろ大変。
時給に換算すると、並のバイトより低いのでは?
しかし、北尾氏、嬉々としてやっています。 とにかく楽しそう。
「ライターをやりながらミニコミ誌を作り、こうしてオンライン古本屋オヤジになっている。
 ではどれが生活の中心なのかというと、古本屋なのだ。
 お金の事を無視してどれかひとつ選べといわれたら、迷わず古本屋を選ぶだろう」
(174ページ)

最近はもっと儲かってるんじゃ? と思いましたが、文庫版あとがきによると、そうでもないようで、厳しいなあ。
(扱う本がマニアックすぎるのでしょうか)

さて、北尾氏が考えるオンライン古本屋の資質はつぎの3つ(34ページ)
 1 本が好きで、本に囲まれる生活が嫌でないこと(否応なくそうなる)
 2 読書家であっても収集家でないこと(いい本を手放すことができるかどうか)
 3 派手好きではないこと(古本屋の仕事の大半は地味である)

私の場合は「2」がダメですね。
気に入った本は2冊持っていてもいいくらいで、売るなんてトンでもない! という人間です。
おかげさまで古書店を開くまでもなく「1」は実現してますな、えっへん (そういう問題か?)

しかし北尾氏、本を整理するために始めた古本屋なのに、逆に本があふれかえっているような・・・?
とても楽しそうなので、まあ良いのでしょう。
(05.4.24.記)



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