フォンタナ/ヴァイオリン・ソナタ全集(2枚組)
(Neyza Copa:violin  Lux Terrae Baroque Ensemble)



Amazon : フォンタナ/ヴァィオリン・ソナタ

Tower : Fontana/Complete Sonatas for Violin

「バロック・ソナタ」という音楽ジャンルが異常に好きな私です。
正直どれも似たような曲ばかりだな〜というのはわかってるんですが、聴いたことのないソナタのCDを見つけるとつい買ってしまう、それが私の悪い癖。

ジョヴァンニ・バッティスタ・フォンタナ(1589〜1630)は初期イタリア・バロックの作曲家。
かつては生没年すら不明でした (まあ16世紀生まれの作曲家はバイオグラフィがわかってる人のほうが珍しいです)。
最近の研究で、ローマ、ヴェネツィア、パドヴァなどでヴァイオリンの名手として人気を集め、1630年、41歳でペストにより死亡したことが判明しました。
ペストかあ・・・ 新型コロナウイルスにさんざん苦しめられた現代人としては、他人事とは思えません。 

死後11年たった1641年にヴェネツィアの出版社から出版された

 「ヴァイオリンまたはコルネット、ファゴット、キタローネ、ヴィオロンチーノまたは同音程の楽器のための18のソナタ集」

が、フォンタナの作品として現存するすべて。
いろんな楽器で弾けたほうが楽譜が売れるので楽器指定はおおらかです。
なおキタローネはギターの一種、ヴィオロンチーノは小型のチェロのことです。
このCDは原則的にヴァイオリンで演奏しています。

ちなみに当時、死後10年もたった人の作品が出版されるのは珍しく、おそらく根強い人気があったのでしょう。

 ソナタ第8番 (う、うつくしい・・・)
 

当時の「ソナタ」は「器楽曲」という程度の意味。
ゆっくりした部分と活発なフーガ風の部分が交互に現れるカンツォーナ様式の単一楽章のソナタです。
麗しい「うた」が現れては消え、自由にファンタジーが飛翔していく様子からは、ロマンティックな物語が思い浮かびそう。
爽やかで心地よい響きは現代人の心にもぴったりフィットします、これが400年も前に作られた音楽とは・・・。

何曲かではリコーダーも一緒に演奏してます。
さわやか度数がアップして、なかなか良きかなです。

 ソナタ第7番 (リコーダーの透明な響き、いいですね〜)
 

メロディは素朴で響きもシンプル、大げさな身振りを持たない抑制された音の表情が耳に優しいです。
フォンタナさん、穏やかで円満な性格の人だったのかなあ。
演奏も凛とした品位を保ちながら、響きの中に色気を忍ばせて耳をそらさせない巧みさ。
適度に湿り気を帯びたなまめかしい「情」が滲みだしてくるのが心地よく、繰り返し聴きたくなります。

 ソナタ第10番
 

IMSLPで調べると楽譜は単純で、演奏者のアドリブやアレンジやテクニックにかなり依存するみたいですが、とにかくこのCDの演奏は素晴らしいと思います。
演奏者のNeyza Copa は南米系のようで、現在はイタリアを拠点にバロック・ヴァイオリニストとして活躍しているそうです。

(2023.08.13.)

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