ローレン・グロフ/運命と復讐
Lauren Groff/Fate and Furies(2015)
(光野多恵子・訳 新潮クレストブックス 2017)



Amazon : 運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)


裕福に育った美青年ロットと、謎めいた美女マチルドは学生時代に電撃的に出会い、大学卒業と同時に結婚。
俳優として芽の出ない夫だったが、貞淑で献身的な妻に支えられ、30歳を過ぎて脚本家として成功。
ふたりは幸せに満ちた結婚生活を満喫するのだが・・・。


夫と妻、双方の視点から描く「結婚小説」の傑作。


世に「恋愛小説」は星の数ほどありますが、「結婚小説」はどうでしょうか。
まあ、夫婦が登場すればどんな小説でも多かれ少なかれ「結婚小説」かもしれませんが・・・。

 ローレン・グロフ/運命と復讐

何やら悲劇のようなタイトルですが・・・「結婚小説」の傑作です。
ともに22歳で結婚したひと組の男女の24年にわたる山あり谷ありの夫婦生活を描きます。

ただし第1部は夫の視点から描かれ、第2部は妻の視点から語りなおされます。
ご想像の通り、第2部は「これってじつはこうだったんです!」というタネ明かしの連続となり、
ミステリの解決編を読むようなスリルと驚きに翻弄されます。

とはいえ、二人の結婚生活は幸せそのもの。
ナルシスト気味の夫ロットは俳優としては挫折するものの脚本家として名声を得、多くの友達を持ち、妻の献身的な愛に支えられ、
妻を深く愛して生涯を送ります(夫婦に子供は生まれませんでしたが)。
物静かな妻マチルドも、夫を深く愛していますが、じつは彼女には夫に言えないいくつかの秘密が・・・。

真の主人公は夫ロットではなく、妻マチルド。
貞淑でよき妻であると同時に、不幸な生い立ちにも逆境にもめげず、怒りをパワーに替え、人生を切り開いてゆくヒロイン。
ようやく得た「自分の居場所」である結婚生活を守るために、ひそかに戦い続けていたのです。
いやー、スゴイなー、この女。
いやおうなくロットの能天気さが際立ちますけど。
ある意味、マチルドの手のひらの上で踊らされていたようなもんですが、まあ幸せだったんだからいいじゃない。
こんな美女の手のひらで転がされてみたいものです(何しろ世界的な脚本家になっちゃうんですから・・・)。
あとロット、酒呑み過ぎだよ(寿命縮めたな)。

著者の語り口は格調高く起伏に富み、ある意味下世話なストーリーを文学的な高みに押し上げています。
シェイクスピアやギリシア悲劇がさりげなく引用されたりしますが、よくわからないところは読み飛ばして差し支えありません。
文章はこなれていて、すいすい読めます。
読後感も爽やかというか、「天晴れ!」と言いたくなります。

でも、ニョウボに勧めるのはちょっと怖いな。

(2018.01.19.)


「よくお聞きなさい、ロット。結婚って嘘でできているの。そのほとんどは相手のための嘘。」
(279ページ)


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