ジェームズ・アンダースン/証拠が問題(1988)
(藤村裕美・訳 創元推理文庫 1991)
Amazon,co.jp : 証拠が問題 (創元推理文庫)
八月の月曜の晩、家でひとり過ごしていたところ、出張中のはずの夫スティーヴンが突然帰宅してきた。
仕事が早く終わったので、という弁解に釈然としないものを感じるアリソンだったが、真夜中過ぎ、二人の刑事の訪問を受ける。
彼らは、今夜若い女性が殺されたこと、現場で死体のそばにひざまずいているスティーヴンが目撃されたことを告げた。
夫の逮捕に打ちのめされながらも、アリソンは彼の潔白を証明することを決意。
そんな彼女の前に現れた被害者の兄ロジャーは、なんとロンドン警視庁の警部だった・・・。
英国本格ミステリの隠れた傑作。
今日11月22日は「いい夫婦」の日ですね。
ちなみにうちは夫婦そろって読書好き・・・なんですが、嗜好はかなり異なります。
ニョウボはSFを好まないし、私は時代小説が苦手。
ふたりともミステリは読みますが、私がガチな本格好きなのに対し、
ニョウボは論理的な犯人当てにはあまり興味が無いご様子。
かつては「ジョン・ル・カレ」とか好きだったそうです、渋いなぁ。
それでも面白かった本はお互いに薦めあうのが読書家の習性。
結局、「やっぱり私には合わなかったわ」ということが多いのはまあ仕方ないです。
むしろ、「これ面白そうだから買ってみたけどイマイチだったわ、読んでみる?」と言われた本が、
「いやいや超面白いじゃん!」ってことがあるのが、興味深くも楽しいです。
さて最近ニョウボに「なんか面白いミステリない?」と言われてオススメしたのが、
ジェームズ・アンダースン/証拠が問題(1988)
「隠れた傑作」といわれるイギリスの本格ミステリで、これはニョウボ殿もかなりお気に召した御様子。
アリソンの夫スティーヴンの浮気相手が殺害され、スティーヴンは逮捕される。
浮気と逮捕の二重のショックに打ちひしがれながら、夫の潔白を証明しようと奔走するアリソン。
被害者の兄ロジャーは、なんとロンドン警視庁の警部。
ロジャーはスティーヴンと話していて、彼の有罪に心情的に疑問を抱いていた。
容疑者の妻と被害者の兄が、二人三脚で真相に迫ってゆくという展開が面白いです。
しかもロジャーは聞き込みの際にアリソンを「妻です」と紹介したりして、ふたりの距離は徐々に縮まってゆきます。
犯人探しもさることながら、ふたりの関係はどうなっていくのだろうという興味もあり、楽しく読み進められます。
夫の容疑を晴らすべく奮闘するアリスンは健気。
しかし、そもそもスティーヴが浮気しなければ事件は起こらなかったわけで、結局一番悪いのはコイツじゃないですか!
「いい夫婦の日」に取り上げる作品としてはふさわしくなかったかな。
じつに完成度の高い本格ミステリです。
読み終わってみれば、著者が縦横に張り巡らせた伏線の巧みさに唸らずにはいられません。
もう一度最初から読み返したくなります。
著者のジェームズ・アンダースン(1936〜2007)は寡作ながら、
ほかにも「血のついたエッグ・コージィ」「殺意の団欒」など、気のきいたミステリを発表しています。
しかしやはり最高傑作はこの「証拠が問題」でしょう。
また、ミステリ・ドラマ「ジェシカおばさんの事件簿」の脚本を担当していたそうです。
(2015.11.22.)