もんでんあきこ/エロスの種子
(集英社 2016〜連載中)

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もんでんあきこ(1963〜)は、1980年代にマーガレットからデビューした少女漫画家。
その後活動の場をレディース・コミック、青年誌にも拡大、
学園もの、格闘技もの、ハードボイルド、サスペンス、サイコホラー、経済マンガ、BLなど多種多様な作品を精力的に描きつづけています。
驚くべきジャンルの広さです、描いてないのは4コマ漫画くらいじゃないでしょうか。
依頼があれば何だって描けますよってことかな、職人肌の実力者ですね。

一世を風靡するほどのヒット作は残念ながらまだありませんが、圧倒的な画力、巧みなストーリーテリングは一級品。

そんなもんでんあきこの、現在連載中の代表作が、

 エロスの種子

「エロス」をテーマにした連作短編集。
はっきりいってエロマンガです、超エロいです、18禁です、しかし決して下品ではありません。
なんといっても絵が芸術レベルで麗しい、いわゆるデッサンが完璧というんでしょうか。
女性の身体の美しさはもちろんですが男性も綺麗、それも女性的なナヨナヨした綺麗さではなく、引き締まった筋肉質ボディ、オッサンでも腹出てません。

そしてストーリーの味わい深さ。
時代背景は大正から昭和、とくに戦中戦後が多く、レトロで淫靡、ほの暗い情念が渦巻くドロドロした展開はじつに文学的。
「エロス」と同時に「タナトス」も色濃く香り、妖しくもスリリングです。

 第1話ためし読み


 「これって桜木紫乃とか宮木あや子とか村山由佳の小説みたいじゃんか」

と思いながら読んでたら、なんと第2巻の巻末に作者と桜木紫乃の対談が収録されていました。
この作品、男性誌に連載されているんですが、アマゾンのレビューなどを見ると、どうやら女性読者も相当数おられる模様 (ちなみにレビューは絶賛の嵐)。
作者が女性というのも大きいのでしょうが、男女ともに受け入れられる官能漫画、画期的ではないでしょうか。

基本的に一篇ずつ独立していますが、続き物になっている作品もあり、とくに第2巻から3巻にかけて画家・昭島薫が登場する連作は非常に読み応えがあります。

(2019.6.1.)



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