アラン・ライトマン/アインシュタインの夢
(ハヤカワepi文庫、2002年  親本は1993年)



Amazon.co.jp : アインシュタインの夢


1905年、スイスのベルンで、26歳の青年アルバート・アインシュタインは、
あの偉大な特殊相対性理論をまさに完成させようとしていました。
その日々の中で、アインシュタインが「見たかもしれない」、時間に関する様々な「夢」
30篇のショート・ショートとして描いた小説です。
研究に没頭するアインシュタインと、彼の友人ベッソーが登場する、ほのぼのとしたインタールードが間に挟まれます。

不思議な印象の本です。
時間の性質が異なる世界が、次々に登場して来ます。
時間が円環である世界、時間が逆に流れる世界、誰にでも未来が見通せる世界、etc・・・
そんな世界の中で日常生活を送っている人々のスケッチを読んでいると、
エッシャーかマグリットの絵の中を彷徨っているような気分になります。
登場する人々も、時間を漂っているようで、ひんやりとした印象を与えます。

一方で、高い場所ほどゆっくりと時間が流れる世界の物語は、一種の寓話ですし、
2年後に世界が終わることをみんなが知っている世界の物語は、不思議に美しさに満ちています。
一気に読みとおすのではなく、折にふれて気に入ったエピソードを読み返したくなるような本です。
なお、アインシュタインの特殊相対性理論を理解している必要はまったくありません
ストーリーのない、散文詩のような文章を楽しめるかどうかの問題です。
わたしも相対性理論、ほとんどわかっていませんから大丈夫 (^J^;)

ところで、作者ライトマン(現役の物理学者だそう)は、この本の30のエピソードの中にひとつだけ、
時間が普通に流れる世界(あくまで現実のわれわれから見て)」を紛れ込ませています。
それがどのエピソードなのかは、訳者も「ここでは伏せておきたい」とのことです。
私は、1905年5月4日の夢(38ページから)が、それにあたるのではないかと思うのですが・・・、自信はありません。
どなたかおわかりになる方、正解を教えてください。

(02.5.12.記)

「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ