デュフリ/クラヴサン曲集
(エリザベス・ジョワイエ)




Amazon.co.jp : Duphly/Pieces De Clavecin

Tower@jp : デュフリ: クラヴサンのための作品集


平日の朝は、6時40分にNHK-FMが鳴るようにタイマーをセットしてあります。
「古楽のたのしみ」という番組の最後の15分を聴きつつ、全身の力を振り絞り、清水の舞台から飛び降りる気持ちで寝床から起き上ります(←どんな大事業だよ)。

つまり15分とはいえ、毎朝バロック音楽を聴きながら目を覚ましているわけです。
私のバロック好きはNHKーFMに洗脳された部分が大きいかも。
もしNHKーFMが朝6時から演歌をやっていたら、私のCD棚には北島三郎藤あや子氷川きよしがずらり並んでいたかも知れません。

さて先日の朝、聴こえてきたのは柔らかなチェンバロの響きでした。
聴いたことのない曲ですが、優雅で明るい、爽やかな朝にふさわしい曲。

 「誰の曲だろうなあ〜、フランスっぽいから、クープランかラモーかなあ。 でもどこか違うような気がするなあ・・・むにゃむにゃ」


夢うつつのまま寝床の中で最後まで聴くと (←はよ起きんかい!)、

 「ジャック・デュフリ/シャコンヌ、エリザベス・ジョワイエのクラヴサンでした」

とのアナウンスが。

 

 ジャック・デュフリ?

聞いたことのない名前です。
早速調べてみると、

  ジャック・デュフリ Jacques Duphly (1715〜1789)。
  ノルマンディのルーアンに生まれ、いくつかの都市でオルガニストを務めたが、
  1742年にパリに移ってからはチェンバロ(クラヴサン)に専念、演奏家・音楽教師として名声を博した。

とのこと。
亡くなったのはモーツァルトより2年早いだけ、時代的にはむしろ古典派ですが、曲は優雅なバロック調。
この人、当時としては珍しく、宮廷や教会に仕えることなく、フリーの音楽家として名声を博し、けっこう裕福な人生を送ったらしいのです。

 なるほど、フリーだけに、ジャック・デュフリー、なんちゃってね!(←おい、座布団全部もってけ)。

 興味をひかれたので、放送されたCDを買っちゃいました。

いやあー、これはいいです! 綺麗な曲ばかり。
しかも親しみやすく聴きやすく、印象に残りやすい!

音楽シーンをリードするとか、音楽史の流れを変えるとか、一時代を画するといった偉大さはないけれど、
時代の趣味を敏感に読み、「ウケル」曲を作る才能に恵まれた才人だったのでしょう。
現代人にも十分に楽しめます。

とくに「シャコンヌ」は、最初に聴いた作品だからかもしれませんが、華やかで気分が浮き立つようで、素晴らしいです。
幸福な愛らしさ響きの面白さ、それだけと言ってしまえばそれだけですが、聴き手に楽しんでもらおうという意気込みを感じます。
音の「軽さ」のわりに、底を流れているものは「熱い」のではないかと (要は生活かかってるわけですからねー)。

 La De Belombre
 

フランスを代表する古楽専門レーベル、アルファの録音は残響多めの、深みのある柔らかい音。
チェンバロのCDは、録音によってはキンキンうるさくて、曲の魅力を味わうどころではないことがあるのですが、
このレーベルはそういう点、安心です。 高いけど。

ところでデュフリは、1789年、なんとバスチーユ牢獄襲撃の翌日に亡くなったそうです。
べつに革命で命を落としたとかではなく、単なる病死のようですが、大きな歴史の節目に世を去ったのは、何となく象徴的です。

(11.9.18.)


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