ロバート・L・フォワード/竜の卵 (1980)
(ハヤカワ文庫)



Amazon.co.jp : 竜の卵

ストーリー
 2020年、カリフォルニア工科大学の若き研究員、ジャクリーヌ・カルノーは、
 地球から0.1光年たらずの距離に、中性子星(パルサー)を発見します。
 この星の直径は20km、毎秒5回の速さで自転していて、重力670億G、表面温度は約8000度、
 秒速30km(1万年に1光年) の速さで太陽系に近づいています。
 2049年、「竜の卵」と名づけられたこの中性子星めざして、
 ジャクリーヌの息子ピエールをリーダーとする探査隊が送り出されます。
 ところが彼らが夢にも思わないことに、
 中性子星の表面では、「チーラ」という知的生物が誕生し進化しつつあったのです。


ファースト・コンタクトものSFの一種です。
笑ってしまうくらいかけ離れた種族とのコンタクトを、明るく肯定的に、しかも説得力をもって描きます。

「竜の卵」星人・チーラは、直径5mm 高さ0.5mm の円盤状で、12個の目を持つ小さな知的生物。
作者・フォワードは物理学者であり、中性子星でも生物が発生し進化しうることを、
科学的にしっかり考証していますが、小難しいところは、まあ、読み飛ばしました。
作者はこの愛すべきチーラの生態を、イマジネーションあふれる筆致で描き出します。
自転周期0.2秒の「竜の卵」で生きている彼らにとって一日は0.2秒、平均寿命は37分です。
その (われわれから見れば) 短い生涯を、精一杯に生き、
協力したり殺しあったりしながら社会を進歩させていくチーラたちの姿、なかなかいじらしい(?)。

地球暦2050年5月22日に、原始的な穴居人のような暮らしをしていたチーラの群れは、
同じ年の6月14日には、古代ローマを思わせる帝国を組織しています。
彼らは自分達の星に近づいてくる、地球からの探査船を「神」とあがめます。
さらに(地球暦で)数日後、科学が進歩し、神に自分達の存在を伝えたいと考えた一部のチーラは、探査船めがけてパルスビームを照射。
うまくコンタクトが成立し、探査船のほうも大騒ぎに。
100万対1の速度差で生きる二つの種族の交流が開始されます。
ピエールたちは、人類の持つ科学知識を体系化して「竜の卵」へと送信することになります。

・・・チーラの考え方や生き方が妙に人間に似ている (とくにアメリカ人に似ている) のはまあ偶然でしょう(笑)。
チーラは探査船から (彼らにとっては) ゆっくりしたペースで送られる科学知識を吸収しながら、進化を続け、
なんとファースト・コンタクトから24時間もたたないうちに人類の科学レベルを超えてしまいます。
(24時間はチーラにとっては数百年に相当しますから、ある意味当然?)
そして地球暦6月20日、チーラの代表者とピエールは直接対面することになります。
数百億Gの重力下に生きるチーラと、人間であるピエールがどうして対面できるのか、
種明かしは読んでのお楽しみというところですが、
数多くのSFで描かれてきたファースト・コンタクト・シーンのなかでも、なかなか楽しい場面です。
「時間」の概念に関してもいろいろ考えさせられる小説でした。

なお、ロバート・L・フォワード氏は、今年70歳で亡くなったそうです。
(02.12.21.記)



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