フランソワ・トリュフォー「アメリカの夜」(1973)
"Day for Night" "Le Nuit Americanine"



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チェロで現在取り組んでいる曲は、バッハ「無伴奏チェロ組曲第2番・クーラント」です。

 

・・・ものすごい難しい曲です!
もちろん全然弾けません。
弾くたび途中で空中分解、墜落してグシャリ、バッハのスライムみたいになってます。
普通の五倍くらい遅いテンポで弾いてるんですが。

道は遠いです・・・。
無伴奏の第1番すら、キチンと弾けない私ですから、無理もありませんが。
え? それなら第1番をしっかりやれ?

・・・だって第1番は飽きちゃったんだもの(←どーしょーもない奴)。

ひとつの曲を作り上げることが、どれほど大変な作業なのかを実感しています。
まあ、下手糞のくせにろくに練習しないんだから当然か(←だめじゃん)。


さて作り上げるといえば、もっと大変だと思うのが「映画」
たくさんのスタッフ・俳優・エキストラ、お金はかかるし期限はあるし、よくは知りませんが気の遠くなるほどの大変な作業であることは想像に難くありません。

フランソワ・トリュフォー監督「アメリカの夜」(英題"Day for Night" 仏題"Le Nuit Americaine")(1973)は、
そんな一本の映画が出来上がるまでのすったもんだを描いた作品です。

 「アメリカの夜」予告編
 

主役の映画監督を演じるのは、トリュフォー監督自身
それまで映画を撮る中で経験した様々なトラブル・災難・むかついたことを、これでもかとばかりに盛り込んで、さぞせいせいしたことでしょう。

「映画に出演中の映画俳優」を演じる映画俳優たち、みんな楽しんでいるように見えます。
主演男優を演じるジャン=ピエール・レオの情けなさには心底イラッときますが、それだけ「情けない男」の演技が巧みということなのでしょう。

そして圧倒的なジャックリーヌ・ビセットの美貌。
彼女がいなかったら地味な楽屋オチ作品になっていたかもしれません。
期せずして彼女の代表作ともなりました。

 恋人に振られそうで仕事が手につかない男優。
 精神科を退院したばかりで神経衰弱状態の主演女優。
 認知症&アル中気味で台詞が覚えられない往年の名女優。
 なんと妊娠していて撮影ごとにお腹が目立ってくる新人女優。
 そして完成までの期限は7週間。

さらに笑える(苦笑?)のが、作品中で撮影されている映画「パメラを紹介します」が、さっぱり面白くなさそうなこと。
俳優・スタッフが一生懸命撮影に取り組んでいるだけに、「たぶん当たらなかったんだろうなこの映画」・・・と、行く末に思いをはせずにはいられません。

ちなみに「アメリカの夜」自体は全世界で大ヒット、1974年のアカデミー外国語映画賞を受賞、トリュフォー監督の代表作の一つになりました。

ジョルジュ・ドリュリューの格調高い音楽も素敵。
 

なおゴダールはこの映画について語っています。

 「トリュフォーは確かに映画の現場を描いた。映画を作ることの意味を描いた。でも肝心なことをひとつだけ描いてない。
  監督が女優とレストランに行ったり、ホテルにしけこんだりする部分だけは描いていない」

(2012.8.11.)



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