横山秀夫/第三の時効 (集英社、2003年)
<ストーリー>
高い検挙率を誇り、「常勝軍団」とも呼ばれるF県警捜査第1課は、3つの班で構成されています。
1班の班長は決して笑わない男・朽木。2班は冷酷非常な策略家・楠見。3班は天才的捜査カンを持つ男・村瀬。
3つの班は、力を合わせるというよりはライバル意識むきだし、
場合によっては足の引っ張り合いのようなことをしながら、
それでもつぎつぎに難事件を解決に導いてゆきます。
昨年、「半落ち」が直木賞候補となるも、「欠陥作」「いや大傑作」と論争になり、
ついにはご本人が直木賞と縁切り宣言までした、横山秀夫さん。
この人の本を初めて手にとってみました。
はたらくおじさんの連作短編集。テンポよく読み進めることができます。
なにせストーリーテリングが、めちゃくちゃにうまいです。さすが直木賞候補。
警察の捜査を現実さながらに描きながら、どの短編にも本格テイスト満載、はなれわざです。
本格ミステリファンが読んで「やられたぁ」とうれしい叫びをあげる作品がずらり。
いっぽう横山さんの描く警察官は、みんなリアルで生々しいです。
出世や保身や家庭や恋愛に悩みながら、激務をこなしてゆく姿は少々痛々しい。
そして警察内部の敵意むきだしみたいなライバル意識、功名争い、
これって現実にはどうなんでしょうか。もし本当だったらちょっと嫌ですね。
自分の所属する会社や組織と比べて、「ウチのほうが多少のんびりしてるな〜」と安心しているおじさん読者、
多いことでしょう、きっと (自分だろ)。
3人の班長達のキャラもみごとに立っています。
いちばん存在感あるのが、ルール違反すれすれ、謀略のような手を繰り出しながら
冷酷非情に犯人を追い詰めてゆく2班の楠見。 思わず犯人に同情してしまいます。
とくに標題作「第三の時効」での楠見は、あたかも神のよう。カッコ良すぎ。でもなんつう憎憎しい野郎。
F県警捜査第1課の物語、これで終わり・・・なのでしょうか?
彼らの物語をもっともっとたくさん読みたいです!。
(03.10.4.記)