望月ミネタロウ/ちいさこべえ(全4巻)
(原作:山本周五郎  小学館 ビッグコミックスペシャル 2013〜15)

ちいさこべえ 1 ちいさこべえ 2 ちいさこべえ 3 ちいさこべえ 4 完

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大工の若棟梁・茂次は、町内を襲った大火事で実家である工務店「大留」が全焼、両親を失う。
亡き父の「時代が変わっても人に大切なものは、人情と、意地だぜ」という言葉を胸に「大留」再建を誓う茂次。
仕事に集中するため、身寄りのない近所の娘・りつを、お手伝いとして雇う。
ところがりつは、火事で行き場のなくなった児童福祉施設の5人の子供達を勝手に引き取ってしまう。


山本周五郎の傑作短編「ちいさこべ」を、「ドラゴンヘッド」などで有名な漫画家・望月ミネタロウがコミック化。
江戸時代の設定を現代に移し、極めて自然なストーリーに仕上げてます。
原作小説のセリフはほぼすべてそのまま使われています。

原作の「ちいさこべ」「ちいさこべえ」になっているのは、「ちいさこべ+絵」の洒落でもあるんだとか。

どのコマも完成度の高いイラストとして成立しうる構図の美しさ。
画面の流れは映画的に考え抜かれ、 おもわず「カメラワーク」と言いたくなるほど。
とくに大工道具、台所用品などの小道具類がきっちり書き込まれ、それらはときに登場人物の気持ちを代弁します。
古い良質な日本映画を観るようです。

原作は短編小説なので、ストーリーを一部ふくらませていますが、全然薄まった感じではなく、むしろ深みと幅が増しています。
素直に「良いものを読ませていただきました」と感謝です。

ただ一つ引っかかるのが、主人公・茂次の長髪ヒゲ面。
これにより茂次に「表情」を与えないのが作者の意図であることはよくわかるのですが、
わがニョウボはこれが生理的に受け付けないとのことでした、残念。

そして茂次以上にミステリアスなのが「ゆうこ」。
彼女はなにを考えているのか想像をめぐらすのも読書の愉しみというもの。

悪人は出てきません、みんないい人です、昭和のホームドラマの雰囲気です。
「肝っ玉母さん」とか「寺内貫太郎一家」とか思い出しました。

なお、原作小説を収めた新潮文庫「ちいさこべ」は、表題作以外も傑作ぞろい。
こちらもまた読み応えMAXであります。
さすがは山本周五郎!

(2016.11.05.)



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