アイザック・アシモフ/鋼鉄都市(1953)・はだかの太陽(1957)

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文藝春秋社から「東西ミステリー ベスト100」が25年ぶりに出版されました。
前身の文春文庫版はながらく私の座右の書でありまして、ミステリの参考書として重宝しました。

今回の新版は、最近の作品もいくつか入っているものの、
「オールタイムベスト」ということで、やはり古典が中心。
なので7割くらいは読んでいるのですが、そのうち半分以上は内容を忘れていることに気づき愕然。

たとえば海外編100位にすべりこんだ アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」
SFミステリの傑作の呼び名も高いこの作品、以前確かに読みましたが、

 「読んだ、面白かった」

という美しくも淡き想い出が心の片隅に残るのみ。
内容さっぱり覚えていません。

本棚を捜索すると、続編の「はだかの太陽」は見つかったものの「鋼鉄都市」は行方不明。
結局本屋で買いました。

 読むと確かに面白いー!
 これが100位ですか!? もっと上位でもいいんじゃないかな?

「鋼鉄都市」の舞台は千年ほど未来の地球、
宇宙人殺害事件を捜査する羽目になったニューヨーク市警刑事イライジャ・ベイリ
宇宙人といってもかつて地球から宇宙に植民した人々の子孫ですが、
衰退する地球は、経済力・科学力・軍事力どれをとっても彼らにはかなわない。
宇宙人側から無理矢理あてがわれた相棒は人間と見分けがつかないほど精巧なロボット、ダニール・オリヴォー

 人間は常にドームで覆われたシティの中で暮らしており、外気に触れることを本能的に恐怖する。
 そしてロボットは「ロボット三原則」により人間を傷つけることはできないという設定が、事件を不可能犯罪としています。

もうひとつの面白さは文明批評の側面で、
人類が置かれている閉塞的状況が、60年前に書かれたとは思えないほどリアルに迫ってきます。
エネルギー不足、失業問題、食糧問題・・・。
これっていま現代われわれが直面している問題じゃ?


続編「はだかの太陽」では、前作で手腕を買われたベイリオリヴォーのコンビが、
植民惑星ソラリアで起きた殺人事件を捜査に出向きます。
ソラリアは人口わずか2万人、人間は多数のロボットを使役し優雅な暮らしを送っています。
個々のソラリア人は広い領地をもち、他人とは決して会わず、テレビ電話で話をするのみ。
「他人と直接会うこと」が最大のタブーであるこの社会で、なぜ撲殺事件が? 

 ・・・ソラリア、要するにひきこもり集団の社会なわけです。
 みんな家にこもってネットやスカイプ使いまくっているんです。
 1950年代の作品なのに今読んでも、いや今読んだほうがすんなり肌になじみます。
 アシモフの先見性、予見能力には背筋が寒くなります。

というわけで、再読してもとても面白かった!です。
なにしろ誰が犯人かも忘れていましたからねえ、初めて読むのと同じように楽しめましたよ、えへん(←威張るな)

(2013.2.8.)


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