ヴィヴァルディ/「四季」&ヴァイオリン協奏曲集(3枚組)
ジュリアーノ・カルミニョーラ(vn)/ソナトリ・ラ・ジョイオーサ・マルカ
(ブリリアント・クラシックス)
Amazon.co.jp : Vivaldi: Concertos
<曲目>
CD1:『四季』
『四季』
3つのヴァイオリンのための協奏曲へ長調 RV.551
協奏曲ニ短調 RV.128
CD2:『人間的情熱』
ホ短調 RV.277『お気に入り』
ニ長調
RV.234『不安』
ハ短調 RV.199『疑い』
ホ長調 RV.271『恋人』
ハ長調 RV.180『喜び』
ト短調
RV.153『変わり者』(弦楽合奏用)
CD3:『祝祭日のための協奏曲集』
ニ長調 RV.212『パドヴァの聖アントニウスの聖なる舌の祝日のために』
ホ長調 RV.270『安らぎ:聖なるクリスマスのために』
ヘ長調
RV.286『聖ロレンツォの祝日のために』
ニ長調 RV.582『聖母被昇天のために』
ハ長調 RV.581『聖母被昇天のために』
ニ長調 RV.208『LDBV』
超カッチョよくてスマートなヴィヴァルディが3枚組でこのお値段ですよ奥さん!!
バロック・ヴァイオリンの第一人者・ジュリアーノ・カルミニョーラ、バカうまです。
バカうまですが、ただ上手いだけではなく、「イロケ」「粋」「洗練」といったものが、きらきら輝きながらほとばしり出てきます。
音が生きています。 楽しそうに歌ってます。
CD1:『四季』
「四季」を馬鹿にしてはいけないのです。
少しクラシックを聴き込むと、「四季なんて、いまさら恥ずかしくて聴けるかよ」って気になったりするのですが、
いけませんいけません、やはりこれはすごい曲です。
編成を大きくしても小さくしても、アレンジを変えても、独奏楽器を変えても、アドリブを入れても「四季」は「四季」。
なんというフトコロの深い作品でしょう。
「運命」や「英雄ポロネーズ」では、これほど多様なアプローチは試せないのであります。
さてカルミニョーラは、テンポの振り幅は大きいものの、勝手な装飾音やアドリブはほとんど加えてません。
きわめて楽譜に忠実な演奏であります。
しかし、退屈なところは微塵もありません。
なんというスリリングで躍動感あふれる演奏。
速い楽章は鮮烈に、あるいは軽やかに駆け抜け、遅い楽章は優雅にたっぷりと歌います。
「四季」のひとつの理想型ともいうべき名演奏ではないでしょうか。
「四季」より「夏」第3楽章 (ほとんどロックですなこりゃ)
CD2:『人間的情熱』
人間の感情をあらわすタイトルがついた曲が集められてます。
ただし、タイトルにこだわる必要はなさそう。
1曲目にしてから、この堂々とした重々しい曲がなぜに「お気に入り」?
むしろ「荘厳」とか「厳粛」とか「偉そう」が似合うと思うがなあ、などと考えているうちに終わってしまいます。
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調「お気に入り」 第1楽章
まあそれはそれとして、曲・演奏ともに、これまた素晴らしい切れ味。
サワヤカな感じの曲が多いです。
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調「恋人」 第1楽章 (幸福感あふれる楽章・・・)
CD3:『祝祭日のための協奏曲集』
宗教的で敬虔な雰囲気の曲が多いのかと思いきや、むしろ「祭りだワッショイ」風のノリでございました。
1曲目『パドヴァの聖アントニウスの聖なる舌の祝日のために』では独奏ヴァイオリンは長大なカデンツァを弾きまくり、
縦横無尽の大活躍。 あまりの凄さに茫然です。
しかし、「舌の祝日」ってなんのこっちゃ、と調べてみますと、
聖アントニウスは非常に優れた説教家、要するにしゃべりが最高に上手くて、
死後も舌だけが生きて動いていたという言い伝えがあるそうです(不気味なんですけど。。。)。
そう言われると、カデンツァ部分が早口言葉のマシンガン・トークに聴こえてくるから面白い。
通奏低音にオルガンが加わっているのは宗教的な要素のある曲だからでしょうか。
ヴァイオリン協奏曲『パドヴァの聖アントニウスの聖なる舌の祝日のために』 第1楽章 (0:54からの独奏ヴァイオリンのカデンツァが聴きもの)
2曲目は「クリスマス協奏曲」で、パストラーレ風の優しい雰囲気。
全編これ「安らぎ」の音楽で、気持ちよいです。
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 RV.270『安らぎ:聖なるクリスマスのために』 第3楽章
この曲だけ、ちょっと毛色が違うものの、他はヴァイオリンの技巧が炸裂するハデハデで華やかな曲が多く、理屈抜きで楽しめます。
とくに最後の曲『LDBV』では、華麗なカデンツァが、これでもかとばかりに、たっぷり演奏されます。
唖然とするほどの超絶技巧に、パガニーニの曲かと思ってしまうほど、凄い凄い。
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV.208『LDBV』 (0:45から飛び込んでくるヴァイオリンの切れ味!)
バックを支えるソナトリ・ラ・ジョイオーサ・マルカは、アグレッシブな古楽器演奏で知られる団体。
ロックのようなノリで楽しめる豪快なヴィヴァルディです。
(06.12.24.)