ドン・ウィンズロウ/カリフォルニアの炎 (角川文庫、2001年)



Amazon.co.jp : カリフォルニアの炎 (角川文庫)

創元推理文庫から、「ニール・ケアリー・シリーズ」が出ているアメリカの作家ドン・ウィンズロウ
角川文庫からはノン・シリーズものが刊行されていて、その最新刊です。

ニール・ケアリー・シリーズのほうですが、もとストリート・キッズのニールが
ひょんなことから、上流階級のもめごとを秘密裏に解決する組織の一員となり
さまざまな事件にかかわる中で肉体的にも精神的にも傷つきながら成長してゆくという、全5作のシリーズで、
現在第3作まで翻訳刊行されています。
ご存知のかたはご存知ですよね、とても面白いんです。
第3作「高く孤独な道を行け」なんか、ハードボイルドと西部劇の融合、
そこへ狂信的宗教団体がからんでくるんですが・・・ どんな話だか想像つきます??

さて、この「カリフォルニアの炎」ですが、
主人公はカリフォルニア火災生命の火災査定人ジャック・ウェイド
かつては郡保安局の腕利き火災捜査官だったが、とあるもめごとから職場を追われ
カリフォルニア火災生命に拾われた男。 「炎の言葉」を知っていて、
焼け跡を歩きつくし、綿密な調査と論理的思考の末、火元と原因をピタリと当てる男です。

海を見下ろす豪邸で火災が発生、女主人が焼死。
夫と子供たちは別居していて無事。
夫である青年実業家からはすぐに保険金請求が提出されたが、腑に落ちないものを感じたジャックは
いろいろ調べた結果、火災は放火であり犯人は夫であることを確信する。
しかしジャックの古巣の保安局は早々に「失火」の調査報告を作成、事件を処理してしまおうとする。

火災調査のディテールがなかなか読ませますが、
犯人が夫であることは早い段階から読者にもみえみえです。
なんでこんなスキだらけの計画で保険金を騙し取ろうとするんだろう、と思いながら読んでいくと
だんだんともっと大きな陰謀が姿をあらわしてくるという仕掛けで、
これ以上はネタばれになっちゃいますが、思ったほど単純なストーリーではなかったです。

悪役の造形もなかなか良くて、亡命ロシア人の青年実業家、
しかしその実態はもとKGBの諜報部員にして、ロシアン・マフィアの一員、
というこの犯人の描き方、ほど良く陰影をきかせてうまくつくりあげています。
主人公ジャックよりこちらに感情移入しちゃう人もいるかも。

食後にウイスキーを傾けながら楽しく読める1冊です。
なかなかいい本です、いい本なんですが・・・
ニール・ケアリー・シリーズの第4作はまだですかあ?

(01.12.12.記)


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