三崎亜記/バスジャック
(集英社 2005年)


Amazon.co.jp : バスジャック


奇想炸裂!


「となり町戦争」で小説すばる新人賞を受賞した作家さんの2冊目。 短編集です。
大胆な奇想と、独特の言語感覚が楽しかったです。
3ページのショートショートから、90ページの中篇まで、長さもいろいろ。 

「二階扉をつけてください」、なるほど、一戸建ての家は、二階の壁に扉をつけなくてはいけないのですね。
二階扉をつけないと町内会のおばさんがどなりこんで来るそうです。
扉をつけるには、透過率調整費、二重渦維持費、流速同調費、共鳴反射増幅費などがかかるのですが、
まあ何とか払えるでしょう。
オチはホラーっぽいですが、そもそも二階扉とは何なのか? お好きにご想像くださいってことですか。

「バスジャック」、最近、様式化されたバスジャックが娯楽として流行しているのはご存知のとおり。
バスジャック犯は4人一組、「シテ」「ツレ」「地謡」「後見」と呼ばれ、厳密に役割分担されます。
こういうところに能楽用語を持ってくるとは、センスいいですね。
初期の筒井康隆を思わせる物語運びにも、ニヤリです。

「動物園」、思念により動物の姿を人に見せる能力をもつ人々が、
動物園の空いた檻のなかに動物を現出させるビジネスをしているって話。
そんな凄い能力、ほかに使い道があるだろうに、と思わんでもありませんが、
ほのぼのとした「お仕事がんばるぞー」的ストーリーには元気付けられます。
なお動物を現出させるプロセスは「表出」「融合」「拡散」「固定」の4段階に分かれています。
詳しく説明されていますので、私も今度やってみようかと。

どの作品も奇抜な設定ながら、ストーリー展開はひねくれてなくて、素直にするする読めてしまいます。
私のツボにはまったというか、大満足! の一冊でした。

「とてもおもしろかったです。うん、おもしろかったって言うより、読んでよかったなって、そう思いました」(81ページ)

(06.2.23.)

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