フレドリック・ブラウン/真っ白な嘘(1953) 不吉なことは何も(1963)
(越前敏弥・訳 創元推理文庫)

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短編を書かせては随一の巨匠の代表的作品集を新訳。
雪の上の足跡ものの傑作「笑う肉屋」、
緊迫感溢れるリドル・ストーリー「叫べ、沈黙よ」、
ふたりの探偵の目前を通過しながら目にとまらなかった犯人のトリックが秀逸な「姿なき殺人者」
身代金誘拐事件に巻き込まれたとぼけた保険外交員の大活躍「生命保険と火災保険」
殺人で終身刑になった男の無実を証明しようと奮闘する刑事を描く名作中編「踊るサンドイッチ」
などなど、奇抜な着想と軽妙なプロットで書かれた名作が勢揃い!


どうやら東京創元社はフレドリック・ブラウン祭りを開催しているようです。
今年(2021年)2月に、「フレドリック・ブラウンSF短編全集」が全4巻で完結したと思ったら(←全部買った)、
今度はミステリ・サスペンスものの短編集である「真っ白な嘘」「不吉なことは何も」が、創元推理文庫から新訳で発売されました。
「真っ白な嘘」は旧訳版を持ってるけど買いました、新訳読みやすそうだし文字も大きくなってるし。

1940〜50年代に雑誌に掲載された短編が合計29編、切れ味鋭い本格推理、サスペンス・スリラー、どれもオチが見事に決まってます。
娯楽小説の王道を行く傑作短編集、短編小説のお手本です、フレドリック・ブラウンは天才です。

ただしあくまでも娯楽小説、泣けるとか感動するとか痩せるとか人生の指針を得るとか仕事力が向上するとか悩みが解決するとか金運が上昇するなどの効用はありません。
「娯楽として本を読む」という、いまやマイナーな、ある意味アブナイ性癖を持つ、選ばれたあなたのための捧げもの。

じっさい、スマホが普及してから、娯楽小説をそれも紙の本で読む人って減ってるんでしょうね・・・。
もちろんKindleで読む人も一定数おられるのでしょうけど。
そういえば、「真っ白な嘘」のラストに収録された「後ろを見るな」を、Kindleで初めて読む人はどんな感想を持つのでしょう。
紙の本ならではの「トリック」が仕掛けられた名作ですから。

70年も前の小説ですから当然古臭いですが、そのレトロな味わいが良いです。
古き良きアメリカの雰囲気を堪能できます。
日本の時代小説と同じノリで読んでます。

(2021.11.28.)

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