三つ葉優雨/僕と魔女についての備忘録(全5巻完結)
(小学館 2023)

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幼い頃、とある森で100歳超えの「魔女さん」(外見はうら若き美女)に拾われた渉。
猫の蛍と魔女さんの家族として暮らすうちに、日々の出来事を「備忘録」として綴り始める。
愛おしい時間をいつまでも忘れないために・・・。
キラキラした時間を過ごしながら少年へと成長していく渉。
いつしか、魔女さんへの想いは「恋」に変わって…?


いきなり大きな災害で幕を開けた2024年。
重苦しい気持ちが、この本を読んで少し穏やかになりました。
いいもの読ませていただきました。

 三つ葉優雨/僕と魔女についての備忘録(全5巻完結)

2歳の時に森で「魔女さん」に拾われた「渉」。
使い魔の猫「蛍」と3人で仲よく暮らしますが、すくすく成長する渉に対し、魔女さんはほとんど年を取りません。

(←育児の極意ですな)

幼児から少年、そして青年へと成長してゆく渉に対して、いつまでも若いままの「魔女さん」。
いわゆる「美魔女」ではなくどうやら魔女は本当に年を取らない(というか年を取るのが非常に遅い)のです。

かっちりした枠組みの中で展開する柔らかく薫り高いストーリー、そして馥郁たる余韻を残したエンディングへ。
構成も終わり方も最初から決めた上で執筆していて伏線の張り方は周到、回収にも隙がなく盤石の読み応え。
ストーリーは一種の円環構造になっていて、冒頭と最後のシーンの構図がそっくりです。
「時の流れ」「生と死」が大きなテーマで、若い人だけでなく私のような年寄りが読んでも感じ入るものがあります。

じっくりと噛んで含んでうまさを味わい、何度も読み返したくなります。
読み返してはじめて「これはこういうことだったのか」と腑に落ちる箇所もあり、本当に丁寧かつ細やかに作られた物語だと感動します。



作者の三つ葉優雨さんは寡聞にして存じ上げなかったのですが、しなやかで抑えの効いた筆致で細やかなニュアンスを表現されています。
調べてみるとベテランの作家さんでした(無知・・・)。
しかも「魔女さん」の家はプロの建築家に依頼して設計図を描いてもらいそれをもとに作画したとか。







画だけでなく言葉選びのセンスも繊細(御父君は詩人らしい)。
ほの暗く甘い歌を静かに口ずさむような言葉たちが心に沁みます。
隅々まで精緻に行き届いた仕上げで気持ちよく読ませながら、確固たる主張を持つソフィスティケートされた名作です。

余談ながら、三つ葉優雨さんは香川県在住とか。
私もうどん県民なので親近感が半端ないです。

(2024.01.07.)

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