あさのあつこ/バッテリー(全6巻)(教育画劇 1996〜2005)
(第1〜3巻は角川文庫版もあり)


Amazon.co.jp : バッテリー(1)(角川文庫版)

<ストーリー>
 原田巧は、ピッチャーとしての天才的な才能を持つ13歳の少年。
 岡山県の山間の街に引っ越してきた巧は、同年齢の永倉豪とバッテリーを組みます。
 彼らと仲間の野球少年たちの一年間の物語。


この「バッテリー」、児童書でありながら、「大人が読んでも面白い」と評判が徐々に高まり、
角川文庫から内容はそのまま成人向けとして出版、
またそれが「本の雑誌 2004年文庫ベスト1」に選ばれるなどして、ちょっとしたブームになっています。

さて現在、わが家では「バッテリー・アクセント論争」が勃発しています。
ッテリー なのか バッテリーなのかという作品タイトルの根源にかかわる深い論争。
わたしが「バッテリー」というと、ニョウボが「それは電池! おまけに田舎くさい」と突っ込んでくるので、
「この作品の舞台は田舎町だからこれでよいのだ。 巧も豪も『バッテリー』と発音しているに違いない」
と言い返せば、「『バッテリー』は関西アクセント、岡山はアクセントは標準語だからッテリー』が正しい」
などと、まあ要するに一家で「バッテリー」にはまってしまったわけです。

それにしても主人公・のキャラクター設定ですね。
13歳にして天才的なピッチャーであり、本人もそれを自覚している一方、他人と協調することが大の苦手、傲慢で冷たいところのある少年。
「試合の勝利とかチームの成長とかのためより、自分の最高の球を投げるためにやっている」(文庫版・V 169ページ)
彼が、温厚で人間味のあるキャッチャー・と出会い、物語は始まります。
とはいえ、第1巻では野球シーンが全く出てこないのは奇妙といえば奇妙(でも面白い)、
第2巻でようやく野球をやり始めますが、この巻はちょっと重苦しいです。
持ち前のゴーマンさから、教師とも監督とも上級生とも軋轢を引き起こす巧、とりなす豪、
自分が正しいと思えば決して妥協せず、一切反省しない巧の姿はイタイタしく、少々読むのが辛いです。
この巻さえ辛抱すれば第3巻から物語は快調なペースで動き始め、
ライバル校・横手二中との練習試合というクライマックス(!?)へ向けてひた走ります。
少しは丸くなるものの、最後まで巧の性格が変わらないのは、ある意味立派。
「野球を通して自己中心的な少年の心に他者を思いやる気持ちが芽生え・・・」なんてありきたりのパターンとは無縁です。

脇役も良いです。
天才・巧の毒気に当てられる形で退部してしまう上級生・展西には、かなり感情移入。
そしてなんといっても「V」から活躍するチームメイト・吉貞が助演賞もの。
横手二中のダークな策士・瑞垣も良いキャラクターです。
後半何かといえば考え込んでしまうに少々鼻白んだ私、どちらかと言えば彼ら「脇役読み」で楽しみましたが、しかしこいつら本当に中学生かぁ?!

あとひとこと声を大にして言っておきたいのは、
 「小町先生はどこに行ったんだ〜!」
        
(彼氏でもできたのかな・・・戸村先生、ふられたか)

(05.2.6.記)


Amazon.co.jp. : バッテリー〈6〉(教育画劇)


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