田中武夫/バロック・ソナタの音楽史(文芸社)
突然マニアックなクラシック音楽の本で恐縮です。
最近見つけて非常に気に入っている本なんです。
この本は、ガブリエリからバッハまで、バロック期の作曲家の手になる「ソナタ」を網羅的に紹介したものです。
バロック音楽史に関する本はいくつか持ってはいるのですが、こういう切り口の本は珍しい。
きわめてマイナーな作曲家についても比較的詳しい記述がされているのが魅力で、
例えば、ジョヴァンニ・ベレディット・プラッティとか、ジャヴァンニ・マリア・ボロンチーニとか
ヨハン・マッテゾンとか、並みの本なら名前だけで片付けられるような作曲家でも、
ある程度のバイオグラフィーを紹介し、代表的な器楽曲を挙げてくれています。
有名どころでは、例えばテレマン。
彼の「ソナタ」をはじめとする室内楽曲、たくさんあるなあとは思っていたのですが、
この本では25ページにわたり、そのほとんどすべてを年代順に解説してくれています。
音楽之友社の「最新名曲解説全集」には代表的な数曲しか取り上げられていないし
平凡社の「クラシック音楽作品名辞典」には題名だけは全部載っているけど解説はないし、
CDのライナーには収録されている曲のことしか書かれていないので、
これでようやくテレマンの器楽曲の全貌が理解できる気がします。
研究家向けの専門書ならいざ知らず、一般向けの本としてはこれは画期的なものだと思います。
もちろん声楽曲は対象外ではありますが、それでもこの本は使えます。
(バロック・ファンとしては聴きたい曲が増えてしまって大変な面もありますが)
文芸社といえば、よく新聞に広告を載せている自費出版の会社ですね。
著者の田中氏は、TBSで放送製作に携わり、平成2年に定年退職をした方だそうです。
ただちょっと難を言えば、おすすめのCDがいくつか挙げられているのですが、 レーベル名もCD番号も書かれていないこと。 それと、作曲家名・作品名がカタカナ表記・日本語表記のみで、原語表記がないこと。 インターネットで検索するときに、これはちょっと不便です。 まあしかし、音楽を聴く時の座右の書が一つ増えたことは確かです。 480ページ近い厚い本なのに1500円という値段も良心的です。 (01.11.14.記) |
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