篠原健太/彼方のアストラ(全5巻)
(集英社 2016〜18)



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西暦2063年、ケアード高校の生徒9人が、教師に引率されて惑星マクパに到着した。
生徒だけで5日間の惑星キャンプの予定だった。
教師が去り、ロッジに移動する途中で、奇妙な球体が現れ、全員飲み込まれてしまう。
気が付くと9人は宇宙空間に投げ出されていた。
ひとまず近くにあった宇宙船に逃げ込むが、なんとそこは故郷から5千光年離れた宇宙の彼方だった。


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大傑作SFジュブナイル・コミック!

「男女9人宇宙漂流記」って感じの少年漫画ですが、なんという完成度の高さ。
仲間と力を合わせてピンチを乗り越え、冒険に乗り出すという少年漫画の王道的展開のなかに、
巧妙精緻な伏線、ベタなギャグ、こそばゆいラブコメ、そして謎解きと犯人捜しが盛り込まれています。

9人を呑みこみ、宇宙に投げ出した球体は何か?

 

投げ出された宇宙空間にはなぜか無人の宇宙船があり、9人はそれに乗り込みます。
やがて、9人の中に全員の殺害を目論んでいる「刺客」が潜んでいることがわかってきます。
なぜただの高校生の彼らが命を狙われるのか? 
萩尾望都「11人いる!」(1975)を思わせるシチュエーションですが、というか多分オマージュですが(両性具有っぽいキャラもいるしね)、
決して二番煎じではありません、それどころか「11人いる!」を凌駕してるんじゃ?
あと、藤子・F・不二雄「宇宙船製造法」(1985)もふまえています。
そして奇妙な生物がすむ星々を巡るストーリーといえば、ルーツはヴァン・ヴォークト「宇宙船ビーグル号の冒険」(1950)ですね!

 

メンバーの中に刺客がいる・・・。
普通なら重苦しい話になりそうですが、ギャグやツッコミがちりばめられていて、けっこう笑えます。
シリアスとギャグの配分が絶妙です。
9人のキャラの描きわけも完璧、どのキャラクターも個性的で魅力的です。

 

第4巻の終わり近くで大きなサプライズがあり(これって高度な叙述トリックですよね?)、
第5巻で真相が明かされ、怒涛の伏線回収から見事な結末へ。
なにげなく読んでた会話や、ちょっとしたギャグと思っていた部分が、じつは周到に張られた伏線だったりして、もう悶絶もの、どこにも隙がない。
21世紀SF漫画の最高傑作と言っていいんじゃないでしょうか(←まだ80年以上残ってるぞ)。
とにかく面白さ保証します!

なお、紙の本で読まれる場合、カバーを外して表紙を見るのをお忘れなく。
楽しい「オマケ」があります。

(2018.02.14.)


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