青崎有吾/体育館の殺人・水族館の殺人
(東京創元社 2012、2013)
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<体育館の殺人>
放課後の旧体育館で、放送部部長が刺殺された。
外は激しい雨が降り、現場の舞台袖は密室状態。
唯一、現場近くにいた女子卓球部の部長のみ犯行が可能だと、警察は言うのだが・・・。
部長への疑いを晴らすべく、卓球部員・袴田柚乃は、学内随一の天才少年・裏染天馬に真相解明を頼んだ。
なぜか校内で寝起きしている、アニメオタクの駄目人間に―。
<水族館の殺人>
夏休みも中盤、風ヶ丘高校新聞部の面々は、校内新聞の取材で水族館に繰り出した。
館内を取材中、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。
なんとサメが飼育員の死体を喰っている!
県警が事情聴取するが、すべての容疑者には強固なアリバイが・・・。
袴田刑事は、仕方なく妹の袴田柚乃に連絡を取った。
「あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を連れてきてくれ!」
バッハの無伴奏チェロ組曲を順番に練習しております。
練習していると言えば聞こえは良いですが、むしろバッハを破壊・冒涜・蹂躙しているような気がしてなりません。
なにしろ1曲としてまともに弾けないのですから!
私が弾いた跡にはペンペン草も生えないと言われているとかいないとか。
今夜もバッハ先生が夢枕に立って、
「私の曲になんてことをするのぢゃ!」と、
カツラの毛を逆立てて怒ることでしょう。
面白いなバッハ先生(←コラコラ)。
さて、そんな私のバッハ破壊活動修行は、ただいま第3番の最後の2曲、ブーレとジーグに魔手を伸ばしているところ。
You Tube/バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番・ブーレ
You Tube/バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番・ジーグ
こんなふうに弾ければ、バッハ大先生もイイコイイコしてくれるのでしょうが・・・(あまりしていらん)。
道は遠いです。
最近とみに思うのは、バッハの曲はとてもロジカルで論理的(←同じだろ)。
下手なりに弾けるようになるにつれて、音のパターンの規則的・数学的な変容が見えてきます。
「ここはこういう法則になってるんだ!」
というのが徐々にわかってくるのです。
低音部の音の動きや、前半の主題が後半で転調するのにも法則性があり、まるでパズルのよう。
その法則をすべて見破ったとき、ちょっとは弾けるようになっている・・・かなあ。
さて、論理的なパズルといえば、最近はまっている本格ミステリ。
青崎有吾/体育館の殺人・水族館の殺人
いまどき「高校生探偵」なんて代物が大手を振って活躍する世界、「名探偵コナン」も顔負けです。
しかもいまどきエラリー・クイーンの「国名シリーズ」も顔負けのロジック上等・犯人当て本格ミステリ。
嬉しくなるほどにアナクロで時代遅れです(←同じだろ)。
なので警察がお間抜けな一方、裏染天馬が神の如き古典的名探偵なのは、もうお約束なのでありまして、
「体育館の殺人」では現場に残された一本の傘から見事な論理を展開、犯人像を絞り込んでゆきますし、
第2作の「水族館の殺人」では、同じく現場に残されたモップの血痕から、魔法のように犯行状況を再現。
そのロジックの端正さといったら。
はじめて「オランダ靴の秘密」(靴と絆創膏!)や「エジプト十字架の秘密」(ヨードチンキ!)や「ギリシャ棺の秘密」(ティーカップ!)を読んだ時と同じ胸のときめきを感じました。
まさしく「平成のエラリー・クイーン」
キャラがラノベっぽいノリなのも意外と楽しくて、事件の陰惨さを和らげてくれます。
新人作家ですが、第2作は第1作よりも確実に進歩していて、数多い容疑者をしっかり描き分けられています。
さらに第2作では柚乃の水着シーンのサービスもあります。
裏染天馬がなぜ学校内で寝起きしているのかという「謎」も徐々に明らかにされてゆき、今後の展開も楽しみ。
なお、当然ですが「犯罪捜査がリアルに描かれていないとダメ」な人には向きません。
「高校生探偵の活躍」を笑って許せる人限定です。
ところで次女(高2)はアニメ「名探偵コナン」の大ファン。
毎週欠かさず見ています。
先日ニョウボが、「今日のコナンはどうだった?」と訊いたら、
「今日は前後編の前編。容疑者が3人いるんだけど、私の推理では犯人は○○ね」
「ほう、自信ありそうね」
「声優の格で推理したからね」
「どういう推理じゃー!」
犯人役は一番「格上」の声優さんが担当するんだそうです(セリフが多いから?)。
なんと、我が家にもアニメオタクの高校生探偵がいたよぉ・・・。
(2013.9.15.)