青島広志/作曲家の発想術(講談社現代新書 2004年)



Amazon.co.jp : 作曲家の発想術

まさか腹を抱えて笑いながら読む本だったとは・・・。

音楽大学の作曲科を卒業した、プロの「作曲家」って、どういう人なんだろう?
という、素朴な疑問に答えてくれる一冊・・・と思ったら、ちょっと違ってました(むしろそれ以上のものでした)。

素朴な疑問の答えは、いきなり冒頭で示されます。
それは「どことなく奇妙な人」。 あるいは、「人間として、最低の尊厳も守られないような仕事」
あまつさえ、「わが父は逝去寸前まで『息子はいいかげんなことをしています』と、すまなそうに世間に言っていた」
ときたもんだ。
これらの言葉で、いきなり読者の脳にハードパンチを打ち込む手腕。 ただものではないぞこれは。
著者の音楽作品は失礼ながら全く存じ上げないのですが、文章は存分に楽しませていただきました。
作曲家で文章がうまいといえば、團伊玖磨氏、吉松隆氏などが思い浮かびますが、
青島広志さんは、自虐ネタ風味の暴露エッセイと言えばいいのか、独特の世界です。

少年時代より音楽に親しみ、東京芸大・作曲科から大学院に進み、修士課程の最高位を得て卒業。
1年後に卒業作品のオペラ「黄金の国」が上演され好評。
つづいてNHKの「新春オペラコンサート」「徹子と気まぐれコンチェルト」「ゆかいなコンサート」などの番組制作に関わり、
現在は東京芸大講師・・・ うんぬんかんぬん、と聞けば、
作曲家としての王道・エリートコースを着実に歩んできた人のように思えます。

しかし、子供の頃一生懸命書いた五線紙に母が天麩羅を置き、おまけに父が醤油をこぼしてしまった事件とか、
オペラ上演の際には、「指揮者失踪事件」「チケット代盗難事件」が起こり、
TV番組はいつのまにか降板させられていたなど、涙なくしては語れないイバラの道。
でも読むと笑わずにはいられません。 これが人徳というものでしょうか(・・・違うと思う)

最終章は、誰にでもできる作曲講座。
なにげに高度なことを、わかりやすく説明しているように思えるんですけど。
うーむやっぱりすごい人かも。
(04.9.9.記)


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