カレン・トンプソン・ウォーカー/奇跡の時代
(雨海弘美・訳 角川書店 2013)



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<ストーリー>
突然、地球の自転が遅くなり始めた。
どんどん長くなる「一日」。
気候が変わって作物は枯れ、磁場が変化して鳥は落ちる。
それでも日常は続き、人々は生きる。
サンフランシスコ郊外のミドル・スクールに通うジュリアは、親友との仲違いや両親の不仲に悩み、
はじめてつけるブラジャーや、初恋の行方に胸を躍らせる。
しかし人々の思いをよそに、世界はゆっくりと滅びに向かってゆく。


仕事から帰るのが午後7時か8時。
睡眠時間は確保したいので午前0時には寝るとして、使える時間は4〜5時間。
その間に、夕食、晩酌、入浴、読書、腹筋、座禅(←嘘)、チェロ弾いて、音楽聴いてネットして、だっこしておんぶしてまたあした
なんてやってますと・・・・。

 1日が30時間だったらなあー!

と思わずにはいられません。
しかし・・・・
この本を読んで痛感しました。

 やっぱり24時間でいいです!

カレン・トンプソン・ウォーカー「奇跡の時代」

突然、地球の自転が遅くなり始めます。
最初は1日が数分長くなるだけだったのが、次第に1時間、数時間と伸びてゆき、
ついには数週間の灼熱の「昼間」のあとに数週間の極寒の「夜」が・・・。
気候の変化で作物は枯れ、磁場の異常で鳥は落ち、海流が変わって鯨は浜に打ち上げられます。

社会の中枢はパニックに陥り、研究者たちは必死で対策を巡らせているようですが、
カリフォルニアの閑静な住宅地に暮らす少女・ジュリアの視点で描かれるため、そうした大きな動きは背景に垣間見えるだけ。
むしろ壊れてゆく世界の中で淡々と過ぎてゆく日常の繊細さに心を揺さぶられます。
親友との別れ、学校でのいじめ、親との仲違い、初めての恋。
そして彼女や周りの人々を取り巻く環境は次第に過酷なものになってゆき・・・。

ヤングアダルト向けらしく、文章が平易で読みやすいのもグッド。
オッサンの疲れた脳でも問題なく吸収できます。

救いのない物語ですが、静謐な読後感です。
本国アメリカではベスト・セラーになっているのだそうで、ちょっと意外。
世界がゆっくりと滅んでいくだけの物語があの国で受け入れられるとは。

アメリカではすでに映画化が決まっているそう。
映画ではブルース・ウィリスが宇宙船に乗って、天才科学者が開発した「超伝導自転加速装置」を作動、
自らの命を犠牲にして地球を救うというストーリーに・・・・・・なっていなければいいんですけど。


ネビル・シュート「渚にて」を思い出させる、静かで透明感のある小説でした。

(2013.8.24.)

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