霜月蒼/アガサ・クリスティー完全攻略
(ハヤカワ文庫 2018)



Amazon : アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


英国ミステリの女王、アガサ・クリスティー(1890〜1976)。
名前は誰でも知っているけど・・・。
そもそも作品が多すぎる。 どれから読めばいいかわからない。有名作品以外も読んでみたい。
そんな要望に気鋭のミステリ評論家が応えた!
クリスティー全作品を評した傑作評論集にしてブックガイド。


とんでもない本を買ってしまった・・・。

 霜月蒼/アガサ・クリスティー完全攻略

チョー素晴らしいクリスティ紹介本です。 いやクリスティとがっぷり四つに組んだ戦いの軌跡と言うべきか。
著者はミステリ評論家ですが、じつはクリスティの長編を7作しか読んでいなかったそう。
これはまずいでしょ、音楽評論家が「第九」を通して聴いたことがないようなものですよ。
そこで意を決して「クリスティ攻略作戦」を開始。

 「クリスティー作品を、古典としてではなく、いまここにある新作として読み、評すること」(9ページ)

をルールに、読みに読んだり全作品、長編ミステリはもちろん、短編集、戯曲、普通小説まですべてを網羅(全100冊!)。
そしてそれらを紹介する文章のテンション高さと切れ味の良さ。
良いと思った作品に対しては賛辞を惜しみません。

 「未読の者はすぐに本屋に走るように。以下の駄文を読んで時間をムダにしている場合ではない」(90ページ) (←い、いきなり言われても)

 「未読はおれが許さん」(399ページ) (←いやアナタもこないだまで未読だったんでしょ)

 「本作にはアガサ・クリスティーのすべてが詰まっている。クリスティーの最良の部分が最良のかたちで顕現している」(464ページ) (←そ、そこまで言いますか)

しまいには、

 「本作を軽んじるような人間には恐るべき苦痛に満ちた死が降りかかるであろう」(397ページ) (←脅迫ですやん)

いっぽう「アカン」と思った作品には手厳しい。

 「これはひどい」(124ページ)

 「読んだあとで残るものが『読んだ』という事実しかない」(410ページ)

 「無駄が多すぎるわりにディテールが曖昧で、プロットは単純、それに載せられたストーリーも痩せ細っている」(429ページ)

けちょんけちょんですが、「けなす書評はほめる書評より意を砕くべきだ」(124ページ)とのポリシーから、
駄作もきちんと丁寧に分析・評論しているのは立派、批評家かくあるべしですね。


さて、個人的な思い出話をば。
私、アガサ・クリスティはけっこう読んでるつもりでいたのです。
1970年代(私が中〜高校生の頃)、「オリエント急行殺人事件」「ナイルに死す」の映画が封切られ大ヒット(観ましたぜ)。
1975年には「ポワロ最後の事件」である「カーテン」が刊行され話題に(買って読みましたぜ)。
翌1976年にはクリスティが死去し、さらに大きな話題になりました。

あのころ、角川映画では横溝正史がシリーズ化され大ヒットしたこともあり、
「東の横溝、西のアガサ」って感じで、日本中がミステリ・ブームだったような気がします。
私も例にもれず、クリスティは30〜40冊は読んだと思う、たぶん読んだ、いや間違いなく読んだんですが・・・、

 この本を読んで愕然。

内容ほとんど憶えていない!
著者が絶賛する「白昼の悪魔」「五匹の子豚」「NかMか」、どれもむかし確かに読んだのに、すっかり忘れています。
(「三大名作」はさすがに憶えていたけどね)
逆上のあまり、アマゾンでクリスティの本を8冊もポチッとしてしまいました。
明日あたりドサッと届くはず。

しかしこれはまだ始まりにすぎない・・・。

この本を読んでしまった結果、読みたいというか、読むべきというか、読まなきゃいけないクリスティの本が、いま数えたらざっと20冊くらい!
いやー、本当にとんでもない本を買ってしまった・・・。

読まれる方は覚悟の上でどうぞ。

(2018.06.21.)


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