R・D・ウィングフィールド/夜のフロスト
(芹沢恵 訳 創元推理文庫 2001年)



Amazon.cp.jp : 夜のフロスト


ミステリ・エンターテインメント好きの方は先刻ご存知でしょうが、
創元推理文庫に「フロスト・シリーズ」という人気シリーズがあります。
イギリスの田舎町デントンの「敏腕」警部、ジャック・フロストを主人公とするシリーズで
「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」に続く第3作です。

<ストーリー>
インフルエンザが大流行し、デントン署員は半数以上がダウン。
そんな時にかぎって、2ヶ月前に行方不明になった少女が絞殺死体で発見されるわ、
一人暮らしの老人をねらった空き巣が頻発するわ、
実業家夫婦のもとには殺害をほのめかす脅迫状が送りつけられるわでもう大変。
なぜか風邪ひとつひかないフロスト警部は大忙しで走り回るが、
どの事件も解決の糸口すらつかめない。
そこへ持ってきて老女連続殺害事件まで勃発、いよいよ状況は危機的に・・・


複数の事件が並行で進行する、「モジュラー型警察小説」の見本のような作品です。
起こる事件は、少女や老人が殺害される、陰惨なものが多いのですが、
下品なジョークを連発しながら捜査に邁進するフロストの姿に笑っているうち
重苦しさも不思議に雲散霧消してしまいます。
フロスト警部、下品で不潔で助平でいいかげんなおっさんなのですが、
人一倍人情家で正義漢でもあります。
「この仕事をしてると、胸糞が悪くなるようなことを、それこそ山のように目にするんだよ(中略)
だから、おれは、冗談を言う。冗談を言ってりゃ因果な仕事の因果な部分を引き受けるのが、いくらか楽になる。」

などと、しおらしいことも言うのですが、
やっぱり基本的に下ネタ好きな下品なおっさんです。
それが、長年の経験と直感と偶然に助けられ、
最後にはなんとすべての事件を解決してしまいます。

いっぽう、フロストがもっとも苦手としているのが書類仕事。
毎回、いろんな書類の提出を迫られては逃げ回るフロストもこのシリーズのお約束で、
今回は車両整備の申請書類と備品状況の調査報告書に苦しめられます。
ところがこれも最後には偶然うまく片付いてハッピー・エンドとなり
読後感は非常にさわやか(?)。

分厚い本ですがキラク〜に読むことができます。
文庫で1300円はちょっと高い気もしますが・・・
まあ、面白いから、許しましょう。

(01.11.13.)


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